フィンランドの魅力の真髄は、田舎町にある
郊外に出かける。ヘルシンキ中央駅からインターシティで2時間弱、タンペレというフィンランド第二か第三の街(だいたいどの国でもこちらが上だと言い張る)に到着する。ここで乗り換え更に30分、小さな田舎町の駅オリベシに到着した。全ての喧騒から遠ざかる。ここで待っているのは友人とヒツジたちだ。フィンランドの魅力の真髄は、田舎にあると言っても過言ではない。
友人の家に着くと、まず犬と猫とアヒルとニワトリが出迎えてくれる。そして多くのヒツジたち。今月、ヒツジの出産シーズンで99頭の赤ちゃんヒツジが生まれ、全部で180頭ほどになった。到着するとちょうどヒツジ小屋(といっても大型トラクターが楽々はいれる大きさ)からヒツジをひなたぼっこ?の為、外に出すところだった。扉を開ける。一頭が走り出すと、一斉に残りのヒツジが続いていく。森の中に入り、雑草や木の皮、木の葉っぱをせわしく食べ始めた。
目的地はここではない。更にヒツジを湖の傍まで連れていかなくてはいけない。森の中を名残惜しそうにしているヒツジも容赦なく連れていく。もしそこに残ったとしても、他のヒツジが回りにいないのを見れば、大声で鳴きだし、仲間を探すので、気にしてはいられない。ヒツジを呼ぶ。そうするとおもむろに一頭が顔をあげる。ちょっとだけこちらに近づく。そうすると、また一頭、顔をあげ、その後ろを歩き出す。
だんだん、その動きが加速され、遂に全てのヒツジが走り出す。こうなればしめたものだ。振り返って目的地に走ると、ヒツジもついてくる。ヒツジが本気で走るとかなりのスピードで最後は抜かされてしまい、その頃にはちょうど目的地に着いている。
この辺りは、フィンランドの湖水地方と呼ばれている。この牧場も湖に隣接している。目の前には小さな島があるが、鳥たちの天国になっていて、誰もそこに近づかない。幸いにして、快晴、風もなく、湖面に小島の影までくっきり見えている。そのあたりに座り込むと人懐っこいヒツジたちがすぐに寄ってくる。寄ってきたヒツジは、靴ひもや袖をしきりに引っ張っている。湖畔にある木小屋のサウナに薪を入れるまで間もない。それまでヒツジたちと時を過ごした。